「所得移転の話」 |
今、日本国内でFITの破綻懸念が話題となっております。 固定価格買取制度(FIT)をご存知でしょうか。太陽光発電設備の余剰電力を電力会社が買い取る制度を、風力、太陽光、中小水力、地熱、バイオマスなど再生可能エネルギー全般に拡大したもので2012年7月に施行されました。欧州諸国ではエネルギーの買い取り価格(タリフ)を法律で定める方式のこの助成制度をフィード・イン・タリフと呼んでいます。 FITは下記のような仕組みの制度です。 ・導入時点から一定期間(たとえば10~20年間)は、電力会社への売電価格(タリフ)を保証する。一度設置された設備については、その後10年なり20年なりは電力の買い上げ価格が変わらない。 ・設備が安くなるのに応じて新規設備のタリフを減らし、国全体の助成水準を下げていく。ただし、既に設置された設備のタリフはそのまま保証される。 日本版FITは特に太陽光発電市場において投資額をはるかに上回る魅力的な買取価格や設備費の100%即時償却等の税制優遇措置の後押しにより2年間で設備売上高ベース2兆円の規模にまで膨れ上がりました。特にメガソーラーと呼ばれる大規模発電設備を用いての大手企業の参入が市場規模拡大となった大きな要因となっています。 今後も市場規模はますます膨れ上がる日本版FIT、期待されたその矢先に事は起こりました。 平成26年10月の時点で国内電力会社10社の内、5社がこの固定価格買取制度に基づく再生可能エネルギー発電設備の新規受付終了を発表しました。電力会社の説明は需要に対する供給の均衡が取れなくなったという事です。加熱する真っ只中のソーラー市場は現在大混乱が起こっています。 この日本版FIT、問題は電力会社側の受入体制不足だけなのでしょうか?以下2点に着目してみました。 一つの事実として自然エネルギー電力の買い取り費用は電力会社の負担ではなく「再エネ賦課金」という名目で私たち家庭の電力料に上乗せされている点。さらに、日本版FITには外資規制が存在しないという点。 この事によりアメリカのゼネラル・エレクトリックやゴールドマン・サックス、ドイツのフォトボルト・デベロップメント・パートナーズ、スペインのゲスタンプグループ、韓国のハンファ財団等、名だたる世界的企業が日本のメガソーラーに外国人投資家として参入している事実があります。 この2点、すなわち私たち一般家庭の所得が電気料金という名を通じて国内に還流する事無く外国へ移転している事を意味します。大きな問題なのではないのでしょうか。 「これからの電気は食べられるようになります」 もし供給される電気にこれまでにない新たな付加価値が備わるのであれば国民の立場からして追加の電力料金負担も納得が行くものではあるのでしょうが、日本版FITは違います。これからもこれまでと何ら変りない内容の電気供給が行なわれるのに対し国民からは強制的に電力料金の追加徴収が強制的に行なわれます。あげくの果てその徴収金額の大半が株主配当金や借入金利息という形で国外に所得移転されてしまうのです。 日本政府は固定価格買取制度の見直しに入りました。今回挙げた問題点の改善着手に期待したいと思います。 |
( 野 神 ) |
「昔と今」 |
私事ですが、先日から自動車の教習所に通い始めました。 といっても、普通自動車免許自体はかれこれ十数年前に取得しているので、通っている教習は所謂ペーパードライバー教習と呼ばれるものなのですが。 助手席、後部座席はともかく、運転席に座るのは免許を取った後1か月ほどが最後という体たらくなので、エンジンのかけ方からもう一度教えてもらっています。 とはいえ、最近の車はエンジンがボタンという時点で、鍵を回してエンジンをかけるという覚え方をした私には敷居が高かったりするのですが、乗りかかった船ということで、何度か教習に通いました。 基本は2回となっているペーパードライバー講習ですが、久しぶりの運転では2回では到底足りず、追加教習をお願いしているのですが、毎回教官が違っているため、教え方も違っているのが面白いなぁ、と感じました。 教え方の上手い下手は勿論あるのでしょうが、それよりも、教官と合うか合わないかということが重要なのかもしれないと教習を受けながら思いました。 何というか、運転中の声のかけ方とか、指示の出し方とか、自分のタイミングとすんなりと合う教官と一息ずれる教官とだったら、やはり自分のタイミングの合う方のほうが教習内容が頭に残っているようです。 気になったので、お話がしやすかった教官の方に色々聞いてみると、やはり、教官との相性はあるということでした。ただし、一度の教習では合うか合わないかはわからないことも多いので、この教習所では、免許取得の場合、同じ教官が卒業までつくが、合わないと感じた場合には替えてもらうことができるという説明を聞いて、自分が免許取得の時に通った教習所とは随分違っているのに驚きました。 その点も気になったので聞いてみると、教習所の違いというより時代の流れだと言われたのが少しショックでしたが、同じ自動車教習というものでも、その時々によって違ってくるというのが面白くもあり、私が通っていたころのような厳しい教官も今はほとんどいないと聞いて、何か寂しいような気持にもなりました。 通っていた当時は、怒られるのが憂鬱で運転が嫌いだったのですが、今、思い返せば運転の危険性をしっかりと教えてくれていたのだと思います。 今回は教習所で昔と今を感じてしまったのですが、年齢を重ねるごとにそういったことが増えるのだろうな、と思います。 昔と今、どちらが良いのかはわかりませんが、昔の良かった点を懐かしみつつ、今の良い点を探して物事を進めていけたらと思いました。 |
( 石 川 ) |
「ヒト」 |
古くから「ヒト・モノ・カネ」の3つは、事業(ビジネス)の3要素と呼ばれてきました。売上がいくらか、経費がいくらか、お金がいくら要るか…等「モノ・カネ」については小規模な頃から必ずついて回る課題で、経営者の方にも感覚的に馴染みやすく、また染み付いていると思います。 しかしながら、この仕事をさせていただく中で一番に感じる事は「ヒト」の事で悩まれる方が多い事です。小規模な頃は「ヒト」はつまり経営者そのものを指すので、ご自身の人脈や判断で経営されるので、会社の方向性や考え方とのギャップはゼロになるはずです。しかし、会社が成長していく中で、従業員の確保は必須であり、その「ヒト」に関する問題は経営を始められると、自分の感覚で「従業員もこう考えるだろう」と、従業員に判断を委ね経営者と従業員との感覚のギャップが乖離してしまい、従業員が退職した結果、会社の成長を止める原因になる事があります。 従業員が辞める原因の多くは、①環境への不満、②キャリアアップ、③上司(経営者)との意見相違といわれています。②、③については直ぐには改善出来ない項目だと思いますが、①環境への不満は比較的改善しやすいと思いますので、今後の参考にして頂ければと思います。 【環境への不満】 ≪物理的側面≫ オフィスの立地やオフィス内の空気環境・温熱条件・休憩室等の施設の有無、トイレ等職場生活において必要な施設の状況、コミュニケーションを取りやすいレイアウト、時間外労働のボリューム、年間休日の日数(プライベートとのバランス)や給与等の待遇面 等 ≪精神的側面≫ 社員同士のコミュニケーション、上司部下・同僚との人間関係、やりたい仕事をさせてもらえるか等 小規模な会社にも就業規則は必要か?とよく聞かれますが、基本的に必要だとお答えします。また、自分が従業員の立場であれば就業規則も整備されていない会社で正社員として働くのはリスクがありすぎるので躊躇されませんか?とお答えします。そうすると多くの社長は「自分はこんな気持ちで頑張ってきたから...」と言いますが、多くの今採用された従業員の方は愛着も情も無いのでそんな社長の気持ち等知るはず無いです。その様な様々な従業員の働き方を統一する為にも就業規則は必要だと思います。 「給料が安い」「やりたい仕事ができない」「就業条件が劣悪」等、人によって何に重きをおいて仕事をしていくかは様々ですので、それに伴って退職を考える理由も様々です。そしてこのような「環境」を理由にした退職動機は、特に社会経験の浅い社員に多く見られる傾向があるそうです。これは、新入社員が表面的な問題のみにフォーカスしがちであることにも原因があり、経営者・上司が、納得感のある説明を行う為にも就業規則の必要性を感じます。 そして、社員同士のコミュニケーションが円滑で、風通しが良い企業は従業員の定着率も上がり、長い目で見ると企業の成長を促す原動力となると思います。そして、1つの考え方として、会社が望む人材に「求める環境」が与えられるかという課題に正面から向き合える企業こそが様々な逆境を越える力となるのではないでしょうか? 今現在、就業規則等を整備されていない方や、長期間見直していない方は一度この機会に検討されてみてはいかがでしょうか? |
( 村 岡 ) |