「BYODとシャドーITについて」 |
今回は似ているようで意味が違うBYODとシャドーITについてまとめてみました。 まず、BYODとはBring Your Own Deviceの略で「自分のデバイスを持ち込む」という意味になります。具体的にいうと、会社の許可を得て私物の情報端末等(PCやスマートフォンだけでなくフラッシュメモリ等の保存媒体までを含む)を業務に用いることをいいます。総務省の統計(2018年)によるとBYODを制度として導入している日本企業は10.5%ほどで、海外でも概ね30%未満となっています。使い慣れた私物だと作業効率が上がるという考えもあるようですが、セキュリティ面の問題や端末内の情報管理ができないため中小企業ではまだ難しい仕組かと思います。ただし、コロナによる在宅勤務等で私物のPC等を利用することが想定されますので、BYODとその運用方法については注目しておく必要があります。 次にシャドーITですが、こちらは会社やシステム管理者が関知していない機器やシステムを部門や個人の判断で利用してしまうことをいい、近年だとビジネスチャットやオンラインストレージ等のクラウドサービスに注意が必要です。BYODと違う点は企業側が関知していないという部分で、セキュリティ面のリスクはさらに大きく、特にクラウドサービスはIDとパスさえあればどのデバイスからでも接続可能ですから、利用する個人の管理しだいでは非常に危険なものになります。なお、会社や顧客の情報が個人の契約アカウントに紐づいて利用されている場合、退職と同時に情報漏洩という扱いになるとも考えられます。 今回の記事を書くにあたり調べてみると、シャドーITは多くの企業が対策に取り組んでいるようです。つまり、働きやすさや個人の意思の尊重をしていった結果、規律が弱まってしまったということでしょうか。個人的には効率より規律が優先されるべきとは思いますが、難しい問題です。 |
( 大 瀬 ) |
「31年ぶりの株価水準」 |
今年の2月、30年ぶりに30,000円の大台を突破した日経平均株価。その後は、昨今の新型コロナウイルス感染症の新規感染者数増加に伴い徐々に値を下げ、8月下旬には27,000円台まで下落しました。しかし、9月に入り、菅首相が自民党総裁選への不出馬を表明したことで株式相場が反発。株価は急上昇し、再度30,000円台へ。同月中旬には、バブル崩壊後の最高値を31年ぶりに更新したことで大きなニュースになりました。 国内における新型コロナウイルスの2回目のワクチン接種を終えた人が国民の半数を超え、新規感染者数も減少傾向にあることから、行動制限の緩和なども含めた経済活動再開への期待が出ていること。加えて、次期首相の下での新政権が新たな経済対策を打ち出すとの見通しが強まったことから景気回復への期待が高まったことが今回の株価急上昇の大きな要因と言われています。 紆余曲折あったものの注目されていた東京オリンピック・パラリンピックが終わり、4度目の緊急事態宣言も長引く状況の中で、景気の悪化を懸念する人も多かったと思います。月次監査での会話の中でも、“株価と景気が伴っていない。”とか“企業の設備投資や個人の消費活動へ繋がっていない。”といった意見をよく耳にします。確かに、日本全体での経済指数と中小企業の業績は直結するとは限らず、一定期間を経た後に影響を受けることが多く、業種・規模によっては逆の動き方をする場合もあります。ただ、日本では経済が低迷しているように感じるものの、実際は新型コロナウイルスによる反動から世界の経済は大きく動いています。その結果、国内企業の業績・株価も追随しており、景気回復の恩恵を受けやすい海運・石油・鉄鋼・自動車関連・半導体など幅広い業種で増収・増益、株価もここ数ヶ月で急上昇しています。この点を鑑みると、ある程度実体が伴っており、前述の設備投資や消費活動にも徐々に繋がってくるのではないでしょうか。さらに、新政権の経済対策によって追加資金が市場に投入されることから、更なる向上の可能性もあります。新政権の経済対策を含め、今後も引き続き経済・景気の動向に注目です。 なお、一方で新聞や報道番組等でも“株式相場の急上昇はやや過熱気味で、高値への警戒から上値は限られる。”といった意見も散見されるため、『投資』という面に関しては(既にされている方・始めてみようか模索されている方に関わらず)判断が難しい時期でもあり、今まで以上に広い視野・綿密な情報収集・極めて短期間における大幅な値動きへの注意が必要となるかもしれません。 |
( 古 賀 ) |
「公開買い付け騒動を受けて」 |
先日、SBIホールディングス株式会社の完全子会社であるSBI地銀ホールディングス株式会社は、株式会社新生銀行の普通株式を公開買付け(所謂TOB)により取得することを発表しました。公開買い付けの期限は2021年10月25日とされています。 SBIホールディングス株式会社によると当該公開買い付けに至った理由の一つを「対象者の主要株主としての立場から、対象者の業績を改善し、企業価値を回復・向上すべく、適切な施策を早期に実施することが急務であると判断(出典 2021年9月9日 SBIホールディングス株式会社プレスリリース)」としています。 一方、株式会社新生銀行はその後、「SBI地銀ホールディングス株式会社による公開買い付けにかかる意見表明に向けた当行の検討状況について」というプレスリリースを発表し、SBIホールディングス株式会社のプレスリリースに対して反論を行っています。 いくつかの報道によりますと、当該公開買い付けは敵対的買収に発展する可能性があり、株式会社新生銀行が買収防衛策を発表することもあり得るとのことです。これを受けて市場では今後新たな展開があるのではないかとの思惑から、公開買い付け価格を株価が一時的に上回る(一般的に、TOBが発表されると経済合理性から株価は公開買い付け価格へ収斂します)など、混乱の様相を呈しています。 敵対的買収というとライブドアグループによるフジサンケイグループへの時間外取引における株式取得を思い起こします。当時ホワイトナイト(友好的な買収先による買収)の役割を担ったSBI(当時はソフトバンク・インベストメント株式会社でした)が今回は敵対的買収を行なうことになるとは思いもよらなかったですが… 他方、今回の買収騒動は株主構成について考える良い機会になるのではないかと思います。未上場企業の場合、公開買い付けや時間取引に接する可能性は低いと想定されますが、株式の譲渡や種類株式などは上場会社だけに限られません。従って、現在の株主は誰であり、どの程度株式または出資をしているのか、といった現状の把握をしていただくことも良いかと思います。 このような現状分析を経ると、現在の株主構成は適正か?今後の経営計画を踏まえて株式の譲渡は必要ないのか?種類株式の発行は必要ないのか?増資や減資は必要ないのか?という自己資本の検証を行なうことが出来るかと考えます。 今回の騒動、今後新たな展開があるかもしれません。まだまだ目の離せない状況が続きます。 |
( 長 田 ) |